あの時のニュースは煩(うるさ)かった。
みんな、
中羽(なかば)に彗星が落ちたことしか報じなかったんだ。流石(さすが)にソファに座っていた
木戸逆音の父さんも呆れていた。
その時は茶髪だけが特徴の逆音(さかね)の家に着いてから、まだ半年くらいしか経っていなかった。だけどその時からホームステイ先のみんなは優しかった。
「外山さん、現場はどうなっていますか?」
「はい、絶望のあまり、細く鋭(するど)い木の棒で心臓を刺し、自殺したと思われる女子高生の死骸(しがい)が一つ……」
あの頃は好奇心(こうきしん)旺盛(おうせい)な小学生だったけど、他局でも同じような内容ばかりで飽きた。テレビを見つつ、好きなポテチをいくら食べても、同じ塩の味しかしなかった。
窓を開けても、いつもと同じように青い屋根が整然と並べられていた。結局は私という九尾(きゅうび)も変わらない日常の中にいたんだ。
あまりにも内容が単調だったので、ベオでDVDを借りた。でも数日経てばこの騒ぎは収まると思っていた。
だが違った。
人々はこの事件の後、『何故か』異能力を手に入れた。異能力を手に入れた人間は、妖怪達を恐れなくなった。
だから人間達は妖怪の里へと侵略(しんりゃく)を始めた。そして、手に入れた土地は開発した。今のホームステイ先の
橋武(はしたけ)だってそうだ。お陰(かげ)で『ニュータウン』が爆発的に増えた。
殆(ほとん)どの妖怪は、街で細々と生きる。
私は、伝統に基づいてホームステイをし、地元に比べたら都会な方の町に暮らす。
狐耳にはどんな音が聴こえるのだろうか? 私の束ねた髪はどんな風を受け取るのか?
異常だけど日常な私たちの世界が、動き出す。
……、卒業式はつまらなかった。だからこそ少し楽しい日常にしていかないと。